夢を見た。
今から30年以上前の記憶。
小学校高学年だったと思う。
セミの泣き声のうるせー、夏の日。
いつも、つるんでいる近所の友達の中に、タカヒロという2つくらい年下の奴がいた。
そいつは、小さい癖に偉そうで、足も速く、頭も運動神経もよかった。
ちなみに俺や友達が住んでいるところは所得制限付きの団地。だいたい皆んな貧乏。
1戸建てに住み、裕福そうな家庭の子はキラキラしていて羨ましかった。
多分みんなも一緒だと思う。
タカヒロが俺にいった。
高校生になる兄貴がいて、今日、誕生日なんや。
兄貴に手紙書いて、送った。
職場に誕生日プレゼント届けに行くから、出て来てやと。
だから、誕生日プレゼント渡しに行くの手伝ってや。
俺は、小さいけど、偉そうやけど、頭も良く、運動神経も良くて、一目おく、タカヒロの兄貴が見たくて
いいよ。手伝うって了解した。
いつも遊んでいる公園から10分くらいの所にJRの駅があり、1日1本、豪華寝台列車が到着する。
いつかは乗りたいなぁと、見るたびに思っていた。が俺みたいな貧乏人は縁がないだろうと諦めていた。
タカヒロと俺と友達数人は、駅にいた。
タカヒロの兄貴に誕生日プレゼントを渡すため。
タカヒロが、兄貴は豪華寝台列車の食堂車の厨房で働いてる。だから、寝台列車列車に乗り込んで、渡しに行く。と言い出したからだ。
さすがタカヒロの兄貴、凄いとこで働いてるなあ。と思ったが、俺らみんな、金ないから、電車乗れないやん。
て言ったら、
改札を走って突破し、電車に飛び乗ると言い出した。
で今、改札の前にいる。
3番線にうんぬん。。ってアナウンスが流れて、電車が到着したのを見計らい、タカヒロは行くぞと言って走り出した。俺らもつられて、走り出した。
改札を突破すると、改札の切符切りのおじさんがコラーと怒っていた。
人混みをかき分け階段を降りると丁度電車の扉があったので、無我夢中で飛び乗った。
と同時に扉が閉まり、電車が発車した。
汚い小学生と豪華列車、明らかに場違い。
タカヒロが、車内の案内板を見て、兄貴は、いくつか先の車両にある食堂車にいる。行くぞといった。
とその時、車掌に声をかけられた。君たち、お母さんは?
みたいなことを言われた。
タカヒロを先頭に、食堂車に向かって走り出した。
皆んなが驚いた顔で俺らを見てる。
こんな豪華な列車にいるわけない汚いガキンチョが、全力で走ってるのだから当然なんやろ。
後ろからは止まりなさいみたいな声聞こえるし、やっちまったなあ、だいぶ怒られるなと思い走った。
タカヒロもいつになく、いつも余裕かまして偉そうな、ちびのタカヒロも必死で走ってた。
兄貴とそんなに会いたいのか、どんなんかなと思いながら、俺も走った。
9両くらいは走ったと思う。
周りの視線は凄い痛かった。奇妙なものが走ってる、早く捕まえて、放り出して。みたいな感じ。
やっと、食堂車に入った。前方に片付けた皿を乗せているワゴンがあった。
なんとタカヒロはそれに飛び乗った。
俺がそれを押した。
今考えると恐ろしい光景。
後ろからは止まれと、怒声が聞こえるし。
そして、食堂車の厨房みたいな車両についた。
タカヒロはワゴンから飛び降り、扉をあけ、
めちゃくちゃでっかい声で、
あにきー!!
たかひろのあにきー!!
誕生日おめでとう!!!
って叫んだ。
奥の方から、タカヒロと背丈の変わらない黒ずんだ顔のずんぐりむっくりして、顔が歪んだ人が出てきた。
俺のイメージとは全く違うタカヒロの兄貴だった。
タカヒロが手に持っていた、茶色い茶碗に入ってるぜんざいをわたした。
兄貴は笑顔で、ぜんざい飲んでた。タカヒロはすげー嬉しそうだった。
そして、俺はなぜが凄い涙が出た。
ある夏の日のタカヒロ兄貴誕生日大作戦。
おわり