有機・ココロ・カラダキレイ
農業いばらき 2020.6「第6回GAP実践編インタビュー」に紹介されました。
GAPは特別ではない
つくば市 株式会社ふしちゃん 伏田直弘さん
今回は、ASIAGAPの個別認証を取得しているつくば市の株式会社ふしちゃんを訪問し、社長からお話を伺いました。
ASIAGAP認証取得までの経緯を教えてください。
新規就農二年目で有機JAS、四年目でJGAP、六年目の今年ASIAGAPの認証を取得しました。JGAPを始めたのは、農場をモレなくダブりなく効率的に管理する仕組みが欲しかったからです。取り組み以前も衛生管理や労働安全などに気を付けていたものの、自己流で気を付けているにすぎず、取引先等の求めている管理基準を網羅しているとはいえない状況でした。自身でその管理水準を高めるにも、気を付ける点を考えて書き出す負担は大きすぎます。そこで、GAP認証はそれらの管理基準がまとまっているので取り組もうと思いました。認証取得に費用はかかりますが、考える手間と比べたら安いものです。JGAPからASIAGAPに切替たのに特別な理由はないのですが、最近はJGAP認証取得農場が増えてきたので周りより一歩先に進めたらなと。
GAPに取り組んでみて、いかがでしたか?
GAPをやらない方が気持ち悪いと思うようになりました。GAPでは書類や現場整備などやるべき事が様々ありますが、全部当たり前の事ですよね。例えば食品安全で注意するのは異物混入や病原菌。これらを防ぐ仕組みのない農場で作った野菜は食べる気になりません。たまたま食品事故が起こっていないだけで、運のようなものですから。農業以外の産業では品質管理は当たり前にやっている事です。例えば、調製時に髪の毛を帽子に入れて手袋をしている事が自分にとっての最低水準という認識になるので、素手で触った野菜は嫌だなと感じるようになるんです。もう、GAPをやらないと自分でも気持ち悪い。
認証取得まではどのように準備しましたか?
コンサルを利用して、審査を受けるまでにJGAPは半年、ASIAGAPは1か月半で準備しました。指導回数はそれぞれ3~4回、所要時間はそれぞれ30時間ほど。一番大変だったのがリスク評価ですね。農場の状況に合わせて自分で考えるように言われますが、白紙の状態から自分で考えるのは難しかったです。管理方法の似た葉物農家のリスク評価を参考にして作成しました。
取り組みが負担に感じる事はありませんか?
農場内での仕組みになっているので、特に大変と感じる事はありませんね。従業員もルールを守って仕事をしてくれます。
従業員への指導はどのようにしていますか?
朝礼と終礼で、農場ルールの周知をしています。シフトで不在の人もいるので、全員に伝わるよう一週間同じ説明を繰り返します。心がけているのは、ルールの目的を伝える事と、一度に説明するのは3つまでに絞る事です。
GAPに取り組んでよかった事は何ですか?
有機JASで書類のベースはありましたが、GAPでは経営数値として記録類が見えるようになりました。また、従業員も含めて衛生管理や労働安全の意識が高まりました。GAPを始める前、ルールを持たずに農場運営していたのは今考えると恐ろしいです。
JGAPからASIAGAPに切替えたことで、変化はありましたか?
日常作業での変化は特にないですが、リスク検討の範囲が広がったのは衛生管理上いいですね。特に「故意による汚染」をリスクとして考えるところなど。悪意ある汚染への防御はもちろんですが、良かれと思って余計な事をしてしまう無知ゆえの汚染は、見落としがちな部分だと思いました。
これからGAP認証を目指す農場に向けて、メッセージをお願いします。
GAP認証は目指すものではなく、やって当たり前の事と認識してほしいです。付加価値をつけるものでもありません。農業は縛りが少ないので経営者にとっては楽ですが、それが怖いところ。我流のルールでたまたま事故を起こしていないだけで、無免許運転と同じです。交通ルールを理解して、運転技能を認められた人達が整備された車に乗っているから事故が少なくできるわけです。農業にそうした制度(GAP認証)がある事に、感謝して取り組んでほしいです。
ありがとうございました!
【取材コメント】
GAPは当たり前の事として取り組んでいる伏田社長。現場でも、従業員の方の動きや掲示、配置などが自然とGAP基準を満たしており、普通の事として馴染んでいる様子が伺えます。GAPに特別感を持たない事が長続きの秘訣のようです。